阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報

阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会が運営しています。当会の活動のほか、阿佐ヶ谷の問題についての個人・団体の発信、区の動向をまとめています

都市計画塾、8月のまとめと9月、10月の告知

まちづくりの名の下に進められる環境やくらしの破壊。

行政の横暴や虚偽説明に対抗する知識を住民が身につける !

として、「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」代表・工学博士(都市計画): 島田昭仁さんを講師に、月イチ開催している「都市計画塾」。次回は

2024年9月22日(日)15:30-17:45 阿佐ヶ谷地域区民センター 第五集会室

「公共用地デベロッパー:事例編」を開講します(受講料500円)。

7月の「仕組み編」を踏まえて、日本各地で「公共用地投売り」「再開発ビルに割高参画」といった事例を具体的にみていきます。

今回で「第一期」は終了とし、「第二期」で学びたいテーマなども募集します。

 

そして10月は「都市計画塾」はお休みで、

前記事:杉並区の「杉一小改築プロポーザル募集」を踏まえ、

10月26日18:30-20:30商工会館第二集会室

「杉一小移転 [ 改築基本計画 ]を読み解く」 

を開催します。詳細は追って発表。

 

遅くなりましたが、8月31日「都市計画塾 : ワークショップとは」です。

杉並区でも「対話」として行われている区主催の集会で、さかんに用いられる「ワークショップ」。付箋をぺたぺた貼るだけでいいのか? どのような課題に対して用いればいいのか? 行政が間違った運用をしているなら、そんなワークショップに参加していていいの? と、今、問題に直面している区民からの切実な質問が!!

動画はこちらから。

https://www.youtube.com/live/QL-E5rUl31Q?si=L2gPNmHM7WdfrjGt

 

テキストの元となった論文はこちらから。スクリーンで見えにくかった図版もこちらにあります。

ソーシャルワーク論を基礎理論としたワークショップ技法の発展可能性

 

書籍はこちら。杉並区立図書館にも在庫。

「知の思的探求~社会思想史の世界」八千代出版(2017)

 

以下、受講者メモです。

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ワークショップとは:

 

まちづくりとソーシャルワーク・ヨーロッパと日本

「グループワーク」は社会福祉の中で醸成された方法。
ユルゲン・ハーバーマス(ドイツ・政治哲学1929- EUの熟議型政策の考え方に影響)まちづくりの協議とは「了解志向であって成果志向ではない」「コミュニケーション的行為」であり、「それは正当か?それは真理か?をいかなる人も要求される」。
しかし現在の日本でのまちづくり協議は「正当、真理でなくても決まったゴールに向かってくれればいい」というものになっている(デザイン会議、阿佐ヶ谷まちづくりセッションに参加した一同納得!)。

日本は市民の行政訴訟のハードルも高い。ヨーロッパ:司法審査権、裁判所が行政を審査する。正当か?真理か?イギリス:前例主義コモンロー、これまでの土地利用はどうだったのか。ドイツ:各事件ごとでなく、憲法に「抵抗権」がある。最初から憲法に照らしてどうか、と審査する。だいたい住民が勝利(!)。
日本:市民は行政に対しての不服申し立て。行政が審査し、司法は立ち入らない。

 

日本の「ワークショップ」
90年代以降日本で真似をして討議型都市計画を導入した。KJ法:おなじみの付箋ペタペタ。会社の研修でやる。「付箋を貼って、似てるかもしれないから、と移動してまとめる」
非科学的!論理法が、帰納法(経験則)でも演繹法(誰がやっても同じになるルール)でもなく、「アブダクション:拉致」!自分の都合いいエビデンスを集める。バイアスかかる。
ex.「少子高齢化」「女性の社会進出」「未婚率」の付箋を「関連があると(きちんと事実確認せず)判断して」集めて、結論のようなものにする。単なるゲーム。
Q:KJって何の略ですか?
A:川喜田二郎(まさかの人名!)(日本・地理学1920-2009、発想法として確立)。
Q:(意見)KJ法であっても、ファシリテーターの実力でアブダクションにならないように、うまく合意に持っていけるのでは。
A:あまりそうはならない。

 



アメリカの「ワークショップの歴史」

第一次大戦の犠牲者、復員兵、戦災孤児、社会福祉としてなんとかする。社会事業の一環としてグループワークを取り入れた。
1950年「国際社会事業大会(ソーシャルワーク論の基礎確立)」ケースワーク、グループワークの手法をコミュニティオーガナイゼーション=まちづくりに。
1956年カール・ロジャーズ(アメリカ・臨床心理学1902-1987)『心理療法と個性の変化』:メンタルヘルスの医師、グループワーク、ファシリテーター(ゲシュタルト心理学)を初めて使う。傾聴。患者自らが課題問題に気づき、解決するお手伝い。どういう課題があるか最初は誰もわからない。
オープンエンド、内発的に導き出す。

Q:まちづくり専門家がファシリテーターになるのか?どういう分野の人が?
A:環境に気づかせるファシリテーターは心理学的ノウハウを持っている。まちづくり専門家はモデレーター(賛否のバラツキがないか、段階的にどこまでやるか)として参加する。

 

1955年日本、茨城キリスト教学園:友田不二男(日本・カウンセラー1917-2005)、ローガン・フォックス(ファックスとも。日本/アメリカ・教育学1922-2023)がロジャーズの精神医療のケースワーク(マンツーマン)の手法をグループワークに拡大。世界で初めてのカウンセリング・ワークショップ。この潮流は今は忘れられている。心理学分野では続いている。

ランドスケープ、まちづくり分野では(アメリカ)

1969年:ローレンス・ハルプリン(アメリカ(ユダヤ人)・環境デザイナー、造園、ダンサー):「ワークショップ」の言葉を一人一人が演劇・ダンス作りの参加過程を共有する。市民協働のまちづくりとして公園、噴水、歩行者空間などのデザインに導入。
ランドルフ・T・ヘスター(アメリカ(ユダヤ人)・環境計画1944-)まちづくりに使いはじめる。
日本では木下勇(日本・都市計画1954-)が世田谷太子堂のまちづくりに導入。世田谷まちづくり公社「自分が作ったものを見せ合う」という解釈。
90年代から自己啓発、企業研修、経営学に使われるようになる。

参加者から:マーケティングでもよく使う。企業のブランドイメージやお店への希望を消費者に話してもらって、新商品開発に繋げた。大企業が何年もかけて、丁寧に消費者の話を聴く。

Q:東日本大震災、閖上浜の内陸移転(石川幹子ファシリテーター)は画期的、唯一の成功例では。
A:現場を知らないが、石川さんはワークショップのノウハウは知らない。

Q:そもそもワークショップは心理学から。当事者がピアワークでやっていて効果があるのはわかる。まちづくりに使うのは効果があるのか?モデレーターが入った場合、手法としてグループワークを使うのか?
A:モデレーターはプロデューサー立場。


グループワークで何をするのか。

1.グループ成員が問題(まちづくりなら地域の)を同一視
2.地域環境の問題の要因を把握
3.測定し
4.修正の方法を選ぶ
5.その方法を評価
6.成果が充分でなかったら、別のやり方で修正
これが、まちづくりでできていれば、すごい(できた例は少ない)。
神戸の真野地区:住宅地に工場、公害問題解決。自治会長とファシリテーターが住民参加の会議で1-6のステージをやっていった。

Q:そこまでやるのは時間がかかる。杉並区の道路のデザイン会議、区にそんな丁寧にヤル気があると思えない。
A:ロジャーズ、友田は医者として患者を治す感覚でグループワークを考えていた。
Q:杉並区の施設再編、ワークショップでやっている。成果志向的な考え方。参加者が自己啓発でなくマイナーな思考。どうやって変えればいいのか。
A:じゃあ何をしたらいいのか。しっかりしたモデレーターを設置。すべてを見渡せる専門家。成果志向にならないようマネジメント。都市計画がトリクルダウン的になっているので、短期間、成果志向になっている。実際やってみたらそんなに時間はかからない。

Q:エネルギー分野ではEUコミッティが規範を作っている。まちづくりについてはあるのか?
A:事業ベースでお金をどのくらいつけるか、経済効果を考えるやり方に変わった。都市計画が産業振興部の管轄になっている。
Q:まちづくりは経済ではなく、アイデンティティ。それは景観。フランスならワイナリーの設計まで手が入る。それを日本でできないか。
A:フランス、イタリアでは文化財保護法が強い。開発より文化財が優先。日本では柴又の文化的景観地区に都市計画道路を敷いてしまった。文化庁の力、ICOMOSの影響力を高める。イギリスのコモンローの考え方:今までこの土地利用はこうしていたのだから、と住民が「正当な期待」をする。それに反することを行政が判断したら、それだけで司法にアピールできる。

Q:ではワークショップはどういうことに使うのが本来か。
A:1.自己啓発だけに使う。2.地域の課題に自ら気づく、コミュニティオルガナイザーを登場させる。アメリカでは住民運動家。3.新しいアイディアを生み出す。世田谷は公園などの公有地をどうするか、なんか面白いアイディアはないか、という目的で使った。
Q:区は施設作り直すため、まちづくりではなく、この施設を建てるためとしている。デザイン会議では、道路を拡幅が先。まちづくりの中でどうしたらいいか。
Q:デザイン会議ではファシリテーターも区の職員も計画のことすら知らない。デザイン会議で使われたワールドカフェ形式はどうか。
A:ファシリテーターは心理学的に、わざと意見を対立させたりして合意にもっていく。ワールドカフェはただのゲーム、ロールプレイ。世田谷もデザインゲームと呼んでいる。いいアイディアが楽しく出たらいい、というのは、公園などの公有地の場合。これ(道路拡幅)があるべきかどうかでイシューが分かれるものでワークショップを使ってはダメ。

Q:マーケティングや公園などの楽しいことへのアイディアを道路とかに敷衍しているのではないか。練馬美術館建て替えもワークショップを使ったと称しているが、あらかじめハコのデザインがある上でのトッピングにすぎない。オープンスタートですらない。オープンエンドにはできるのか
Q:岩手県の平泉では、ICOMOS危機遺産になることを行政が知らない。お寺の上に送電線、駐車場を増設して外資系ホテル誘致。
A:建築家のワークショップはトッピング型。小布施町の図書館は住民ワークショップしたのに意見を入れず、建築家の思いどおりになった。その図書館が学会賞を取って「街の誇りです」などと言っている。
真野地区では道路の計画があり、事業認可されたのを全部ひっくり返した。住民のまちづくり設計図を作って市にやらせた。賛成反対、怒号も受け止めてオープンエンドにもっていった。行政職員の質を上げないと。トップ、上司、首長が変わらないと。真野地区は、日本唯一、都市計画を住宅局(福祉)が担当している。
Q:神戸のタワマン規制はどうか。
A:地区は違うが市にそうした文化はある。

Q:傾聴、オープンエンドを毎回みんなで確認し、お上に従うのがいい住民、みたいなのを変えていく場にできないか。施設再編では住民が“謎に経営者目線“になり「区の出したものが効率いいのでは」となる。法律、福祉の専門家を取り込む。子どもの権利条例、老人福祉の理念に戻って考え、当事者主権にもっていく。
Q:(意見)施設再編は7回やって少しずつみんなで提案して変えられた。グループで話すのを変えて全体共有にさせた。職員も「いい話が聞けた」と言った。外環道でもKJ法でやっていたが、問題があるので私たちと話し合いを、とグループを作った。
まちづくりは前は杉並区、もっとちゃんとやれていた。まちづくり協議会で議論したが、コンサルも話をちゃんと聞いてくれた。みんなで作りました、という結論、行政はあまり入れていない。阿佐ヶ谷にしても道路にしても、規定路線を打ち破るのがハード。しかし田中区長、山田区長のときでもできた。協議会は民間の形で残っている。行政が受け入れたかは問題。

Q:そのようなよくないワークショップでも、参加しないと勝手に決まってしまうのでは。
Q:道路の良し悪しを決める場ではない、というならその話をする場を別に設けなければいけない。
A:コンサルは「何回でゴールに導くか」で契約している。まちづくりや都市計画はそうは言っても、入った以上オープンエンドでなくてはいけない
昔は、23区すべてにまちづくりセンターや公社があった。それがモデレーター。それはできないとしても、いい民間専門家を連れてくるとか。
ワークショップに参加するかは、最初に「オープンエンドか?」と確認。結論が決まっているなら毅然と不参加していい。

 

※後日9/8西荻窪の「デザイン会議」が行われました。受講者イケガミが「毅然と半分で退出」したレポートはこちら。

https://nishiogidrunker.hateblo.jp/entry/2024/09/10/161014

その前日の区長参加の「聴っくオフミーティング」にも当選。たしかにオープンエンドかもしれないが、話し合った結果を何に使うのか不明…

https://nishiogidrunker.hateblo.jp/entry/2024/09/14/215023