議事要旨確認作業を振り返って ―「本当の対話」ってなんだろう―
阿佐ヶ谷・杉一小問題についてのこの間の区と区民の意見交換の報告は、区のHPでは「『対話』を大切にしたまちづくり」というコーナーに掲載されています。
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/machi/taiwa/index.html
その中の「阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりの取り組み」
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/machi/taiwa/1089147.html
の中に、「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」の区長・区職員との意見交換の議事要旨も掲載されました。
▶阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会 議事要旨(令和5年12月25日)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/089/147/gennhuukei.pdf
▶阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会 議事要旨(令和6年1月31日)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/089/147/gennhuukei2.pdf
この議事要旨を双方で確認し完成させるまでの大変だった作業を振り返ってみます。
他団体のもの(特に「杉並第一小学校学校運営協議会臨時会」「杉一小を現在の場所に残したい現役保護者有志の会&OB保護者有志の会」)も含め、大変重みのあるものです。
阿佐ヶ谷・杉一小問題は終わっていません。これからを考えるために、是非お読みください(文末に各リンク)。
■2023年10月22日の「阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会」の最後に、区長は“話し合いを続ける”約束をしたが…
区は、2023年8月、10月に3回にわたり「阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会」(以下「振り返る会」)を行い、開かれた場に多くの区民が参加しました。それまで阿佐ヶ谷・杉一小問題について、区からの説明がほとんどされず、区民が意見を届ける機会もありませんでした。3回の「振り返る会」は、岸本区長の「対話の区政」に希望を抱いた区民が、初めて区長と区職員に意見を伝える場となりました。反対や不安、慎重の意見が噴出し、3回目も時間切れとなったため、3回目「振り返る会」の最後に、区長は以下のように、話し合いを続ける約束をしました。
“本日はこれで終わりにしたいと思うが、本日いただいた宿題もあり、この先何らかの形で話し合いを続けていくことはできると思っている。それはまたお知らせさせていただく。そしてその間、この会には出席しづらい方々や、地域の関係団体、学校関係の方など個別にお会いして話し合いをしていきたいと思う。今日の大きなメッセージは杉一小学校の在校生からいただいたので、このことを重く受け止めて、子どもたちの意見を何らかの形で聞くということも行っていきたいと思う。”
■その後、各団体と区長・区職員との意見交換が行われ、初めて双方での議事要旨確認が行われたが…
12月に区は関係各団体との意見交換の場をいくつか設け、その一つとして、私たち「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」(以下「原風景の会」)にも声がかかりました。私たちは、「振り返る会」の続きの会(限定した関係者対象ではなく、全区民に開かれた対話の場)がその後に開かれることを期待し、それに向かっての一段階として意見交換の場に臨みました。
2023年12月7日の「『阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会』参加者有志」と区職員の意見交換では、参加者が議事録の相互確認と公開を要求し、それは叶えられました。
その後、2023年12月25日に「原風景の会」では、区長・区職員との意見交換の場をもちましたが、私たちから議事録はまだかと問い合わせをするまで、区は相互確認をするつもりがなかったようで、驚きました。問い合わせてようやく議事要旨(案)が送られてきて、他団体との意見交換の議事録の相互確認もされるようになったようです。区職員の話によれば、これまで、このような議事録相互確認をしたことがなかったそうですから、この時点では、これも一つの前進だと思っていました。
■議事要旨確認作業も終わらないうちに、いきなり区長メッセージが出された
2023年12月25日の意見交換の議事要旨確認については、2024年1月10日に区から「原風景の会」に当初案が送付され、3回のやりとりを経て、双方の確認が終了したのは2月7日でした。
このやりとりをしている間、1月22日に区長ビデオメッセージが出され、区長の「杉一小移転計画の見直しはしない」決定が発表されました。
“教育長との意見交換を踏まえ、現計画を見直し、小学校を現地改築とする計画に改めることは難しい、との考えに至りました。
現計画は私の就任前に締結された合意に基づき、他の施行者から多くの協力を得ながらこれまで進められてきました。……仮に同意が得られれば計画の見直しは可能ですが、その際には、これまでの施行者の負担等を踏まえた補償金などの支払いが必要となり、……“
■2回目の意見交換も行われないうちに、杉一小移転改築設計費を含む経費が来年度予算案に計上
その後2024年1月31日夜に「原風景の会」と区長・区職員との意見交換の場がもたれました。1月22日の区長ビデオメッセージの後でしたが、この場でも私たちは「対話」は継続中であること、杉一小移転を前提としない「本当の対話」を今後も継続すべきことを訴えました。この議事要旨の確認作業は、2月19日から3月4日にかけて行われました。
この直前、1月31日午後に区長記者会見が行われ、令和6年度当初予算案に、杉一小移転改築設計費を含むまちづくり推進の予算を計上すると発表があり、2月9日招集の区議会第1回定例会本会議に上程されました。
“阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりの推進"
事業調整担当、拠点整備担当、学校整備課
杉並第一小学校の移転改築を含む阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりについて、共同施行者の理解と協力を得ながら透明性の高いプロジェクトとして取り組んでいきます。
■杉並第一小学校移転改築の設計 6,854万7千円
■土地区画整理事業 1億582万5千円
■公民連携まちづくり 555万7千円
■2023年12月25日意見交換の議事要旨(当初案)で、大事な部分がごっそり削除されていた例
p.7 「病院の跡地は二束三文」を知らないと、区職員がとぼける部分
○参加者:病院跡地というのは二束三文。土地は等価交換なのか。区、区民の財産が減 ることだから、検証して示してほしい。
- 杉並区:病院跡地が二束三文であるというのは、何か調査などをした結果か。
○参加者:普通そうでしょ。常識でしょ。駅前と病院跡地は全然違う。
○参加者:専門家に調査してもらったものを出してほしい。今検討するのではなく。区の職員系でやるのではなく、第三者にやってもらって出してほしい。
p.10 B案は区から言い出したことなのか、話がころころ変わり区職員が逆ギレする部分
○参加者:二者から話を受けたのか。区から話をされていないのか。
- 杉並区:二者からけやき屋敷に病院を移転する話を受けて…。
○参加者:区から話を持って行ったのではないのか。二者の方へ。
○参加者:今日の資料には「区から出した」と書いてあり、話が違う
- 杉並区:区から、平成28 年に…。
○参加者:言うことがころころ変わるんで…
- 杉並区:二者から話を受けたことをきっかけに、…
- 杉並区:ちょっといいですか…
○参加者:ちょっといいですか。そうゆうふうに、話がころころ変わるから信用できな いのでちゃんと検証してくださいと言っている。
- (区長):変わってないですよ。
○参加者:さっき別の参加者が言った第3者で検証してほしい。
- 杉並区:皆さんが「検証してくれ」と仰っているが、皆さんにとってのこの経緯はな んなのですか。皆様にとっての受け止めは。
○参加者:プロセスに問題があるってことは区も言ってるじゃないですか、それはいい んですよね。受け取り方が違うという話ではない。
- 杉並区:過去のプロセスに関して反省している旨は申し上げているとおり。
○参加者:プロセスに問題があったと認識しているのなら、なぜ見直さないのか。
p.11-12 区長発言「就任直後から区役所の中でずっと言ってきました」「部長たちだけではなくてもっと別の幹部からも言われ…」と吐露する部分
- (区長):……今の時点で区がもう一回地権者と新しい合意を作ることは難しい。難しいということにも、根拠がある。それはできれば部長からも言ってほしいと思っていまして。就任直後から区役所の中でずっと言ってきました。それが実現しないことに対して自分として苦しい思いもしてきたが、部長たちだけではなくてもっと別の幹部からも言われている。どうしてそんなに困難なのかということが結構わかってきたこともある。……
○参加者:……A街区、C街区両方にもっている区の権利の中で何ができるか。或いは地権者さん、病院さんと相談しながら、両方の権利をうまく使ってできるだけ良いものを作る、そういう話ができればそれで良いのであって、計画をひっくり返そうとか、反対派とか言われるのは心外だけど、全然反対派じゃなくて前向きな話をしたいと思っている。……これからできることをみんなで考える。それでいいんじゃないですか。その中には、A街区も利用した学校という考え方もあるということだと思う。
○参加者:先ほど課長もA街区に杉一校舎を残す話もしてくださって良かった。杉一跡地には何割かは区のもの。そこに校舎を残すこともできる。そういう方向で良いプランができるし、病院跡地には校舎のほかに緑の公園があり…という方向性で考えてほしい。お金のこともきちんと検証を。
p.13-14 B案決定プロセスで、CS、改築検討懇談会をスポイルした問題を、参加者が追及する部分
○参加者:……学校改築検討懇談会の皆さんが全く知らないところでB案に変わった。つまり、区が言い出してB案に変えてもらったと仰るけど、学校の一番大事なCSの人たちや改築懇談会の人たちは知らなかったわけ。
- 杉並区:当時は説明したが、記憶にないということかもしれない。
○参加者:それはすごく失礼。案内もらっていないと言っている人が少なくとも3人はいる。……本人が受けていないと言っている、それは否定できない。だけど、区がこういう風にしたいと言った。そういうことがあったんでしょうね。それは学校の人たちが関与していない。だから、今になってCSの人たちが移転には反対だと仰るし、保護者の方々も、「え移転するの。それは。」っていう人も出てきている。だから、学校がこっちの土地の方が良いからお願いしますよ田中区長と言って変えたんだったら、それは言うとおり。だけどそうではない。学校の人たちが改築検討懇談会もCSも、なんだか知らないけど、こんな風に決まったんじゃなかったのって言ってたのに、移転に変わってしまった。だから、学校の人たちが今になってそれは違うよって言いだしている。……一番大事なのは学校関係者の意思だと思うので、……現役の学校に関わっている方、保護者が「ちょっと待って、おかしいんじゃない」と言っている以上は、それが区民の意思というか学校側の意思だとすれば、それを今こういう状況でこういうご意見が出ていますと、区としてももう少し検討を加えていきたいということを、地権者の方、施行者の方々にお伝えしていくのは、それはやっていただきたいこと。……学校の意思を第一に、地権者や施行者会の皆さんにきちんと話をしていただく、ということを望みたい。それが行政のお仕事じゃないんですか。
p.15 参加者が、最後に1月13日ワークショップへ区長の参加を呼び掛けた部分
○参加者:区長は、133号線予定地を反対する会と一緒に歩いてくれた。……阿佐ヶ谷北東地区のあの辺を区長も一緒に実際に歩いてもらい、先ほども夢のあるプランが出たが、どんなプランがあるかを住民側からいろいろ出し合って話し合う会を、年明けにつくりたい。そのときは是非区長に来ていただきたい。改めて呼びかけをしたい。是非いらしてください。一緒にやっていきたいです。
*以上は、区から提示された当初案でごっそり抜けていた大事な部分ですが、このほか全体にわたり省略や改ざんが行われていた。録音を確認しながら正確に修正していくと、当初案は跡形もないほど真っ赤になりました。この真っ赤を全てお見せしたいぐらいです。
■2024年1月31日意見交換の議事要旨(当初案)では、大事な部分がごっそり削除されていた部分はなかった
■最後に ー「本当の対話」ってなんだろうー
この議事要旨の確認作業を通して分かったことは、区は「議事録ではなく議事要旨である」と称して、かくも記録を捏造するということでした。あえて言う、「捏造」です。区にとって都合の悪い部分は、ごっそり削除され、改ざんされていました。
せっかく意見交換の場に参加したのに、当初案では、その内容が削除、改ざんされていました。参加者がチェックをしなければ記録にすら残らなかったと思うとぞっとします。この区政には監視が必要であることを、思い知らされました。
「対話の区政」と言いながら、記録を捏造するとは、なにごとでしょうか。
当たり前ですが、「対話」というなら、区と区民は対等であるべきです。区が「結論ありき」で設定する場は「本当の対話」ではありません。また、公式に残された議事要旨を読み返しても、依然闇は闇のままで、情報公開すら十分に実現されていないのです。
区民は、区長を、区政を、“クリティカルに”監視します。
“私は、対話の区政の重要性ということを、選挙戦を通じた中心的なテーマとして訴えてきました。そのための前提となるのが、区政の情報を区民の皆さんと幅広く共有していくことであると考えております。もとより、区政の情報は区民のものであると考えておりますので、こうした認識をもとに、情報公開、情報発信を飛躍的に向上させ、情報公開度ナンバーワン、透明度ナンバーワンの区政を目指してまいります。”
“議員、区民、職員の皆さんには、区長に対してクリティカルであり続けてほしいと思っています。クリティカルを日本語にすると「批判的」ですが、クリティカルにはもっと多面的な意味があります。日本語ではクリティカル・シンキング、「批判的思考」の方が使われるようで、大辞泉には「物事や情報を無批判に受け入れるのではなく、多様な角度から検討し、論理的・客観的に理解すること」と記述されています。
クリティカルに考えた上で、場合によっては力を合わせ、場合によっては別の方法を提案する。こういう一連の行動が議会でも区役所でも普通に行えるようにしていきたいと思います。“
(「区長就任にあたって」令和4年(2022 年)9月12日 杉並区長 岸本聡子 より)
-----------------------------
他団体との意見交換議事録は以下。
商店会等の「マイタウン阿佐谷協議会」以外で、移転賛成の意見はまったく出ていないことがわかります。特に「学校運営協議会」の議事要旨はぜひお読みください。
「阿佐ケ谷駅北東地区のまちづくりを振り返る会・参加者有志」(23.12.7)
「杉一小を現在の場所に残したい現役保護者有志の会&OB保護者有志の会」(23.12.13)
同(24.1.19)
「杉並第一小学校学校運営協議会臨時会」(23.12.8)
同(24.1.15)
「杉並第一小学校保護者及び小学校移転予定地近隣住民等」(23.12.19)
「マイタウン阿佐谷協議会」(23.12.5)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/089/147/maitaunn.pdf
2023.10.17「施工者会議(杉並区・欅興産・河北病院の個人共同施工三者協議)」はこちら。